道具とは?

What should "be a tool" ?

2017-10-8

そもそもモノづくりのモノ(道具)とは何か(道具の起源)?

 ・いろいろな野生動物も、周りにあるものを道具として使うだけではなく、道具を作ることが知られている。 (北原隆、乗越皓司)

 ・ミミズでさえ枯葉を巣穴のフタにする。(チャールズ ダーウィン)

 ・巣穴そのものが道具ではないか?巣を作る生物は全て道具メーカーではないか?

 ・動物が巣や道具を作るのは本能であり、機能や目的を意識して(頭で考えて)作るというより、

  手足を使うような感覚で使ったり、作ったりしているのではないか。

 ・ヒト以外の動物の道具は自分の身体で作られ※)、身体の機能を増大強化する。

従って道具とは身体の延長と考えられます 。 

しかし一旦できた道具は身体外なので環境の延長とも考えられます(巣穴)

 ヒトが作る石器は身体で直接作れないので、道具(石)で作られる(道具の道具。2次道具)。

道具の進化上の意味は?

2017-10-5

進化とは生物の身体・動作の環境への適応なので自分が作った 道具に対して自分の身体・動作が適応する進化が働くでしょう。

道具は身体として環境に働きかける一方、環境としても身体に働きかけるという、2重性を持っています。

ヒト以外の動物の場合、道具の進化はDNAを次世代へ引き継ぐことで行われるのでしょう。

すなわち、動物の道具も進化するけれど、本能(DNA)によるゆっくりした進化と言えそうです。

他方、ヒトの場合は道具に関する情報を次世代に直接伝えるので、道具の進化はDNAの進化に比べて非常に速かったのです。

すなわち、ヒトは、DNAと脳内情報との2つのチャンネルで次世代に伝えることができたので、 道具を素早く変化させて環境に適応できたのです。 道具が高速で進化できたので、身体は進化しなくても環境に素早く適応できました。その結果、ヒトは地球のあらゆる環境に種類を増やすことなく単一の種として適応するようになりました。これは、道具(技術情報)は第二のDNA(遺伝情報)となって身体の外に具現化したものと考えれば分りやすいです。

人間独自の道具は石器が始まりですが、もっとも古い石器は約250万年前の地層から発見されたもので、それは、アウストラロピテクス猿人の時代らしいです。普通ホモ・ハビリス原人200万年前以降がヒトと考えられているので、ヒトの始まりの考え方が大きく揺らぎます

  ※)ヒトとは何か?現在の類人猿(チンパンジー、ゴリラ、オランウータン、ボノボ)は、生物学的にはヒト扱いらしいです。 従って、ゴリラは一人二人と数えるらしいです。

ヒト以外の動物の道具は、自分の身体(口や手足)で作られます。

ヒトが作る石器は身体で直接作れないので、道具(石)を使って作られます(道具の道具。2次道具、身体の延長の延長)。

石器を作るのは簡単ではありませんでした。石器用の石を数キロ先の遠くの石切り場に取りに行く間、

食べ物の心配は仲間がカバーしなければならなかったのです。

石器があることは、高度な社会性・役割分担があることを意味すると考えられています。

ヒトの誕生には、まず石器が決定的に重要であったと思われます。ヒトが石器を作り、石器がヒトを作った。

次に重要なのは、火を使った料理です。石器と料理は口と内臓が行ってきた食事と 消化活動を体外に延長したものです。

料理の獲得で、エネルギー吸収 効率が飛躍的に増大し、脳が増大しました。ホモ・エレクトスの時代らしいです(約150万年前)。

料理に適応して内臓や代謝が進化した結果、現在のヒトは生食だけでは生きていけなくなりました。(アメリカでは生食ダイエットがあるらしい)

社会変革のトレンド(社会学から)

2017-10-5

技術の発展が人類の人口爆発を支えました。(見田宗介、福岡賢正

・技術革新によって人口が爆発的に増大してきました。

・地球資源の限界、経済的未開拓地の減少で、 人口増と経済発展は飽和に向かうと考えられます

・社会構造は進化してきましたが、各時代の社会性階層は置き換えではなく、重層化 されています。

・これから迎える人口飽和社会のために、価値観の転換が必要です。(自然対人間、人間対人間)

現在のモノづくりの課題とは

2017-10-5

人口、資源・環境、エネルギの制限から、これまでのようには物質的な経済成長は望めないという考え方があります

 

                    拡大経済 → 定常経済 (広井良典、水野和夫)

 

ただし、全体として成長が少ない社会、限られたパイを奪い合う社会のなかで一部の成功者が成長を目指すと(富の独占)、格差が際限なく広がり、いびつな社会になる危険が大きいです。

それでも、人口・資源の飽和に対して多くの人が楽観的に考えています。

  ①それでも人の欲望がある限り経済成長ができる。(本質的に必要かどうかに関係なく、新しい需要が創出できる)

  ②情報コミュニケーション技術AI金融工学でバーチャルな成長できる。(資源の枯渇に影響しない)

  ③地球外に空間資源エネルギーを求めれば成長できる。※)

 

   楽観論に頼りすぎず、経済発展の考え方を見直す必要はあるでしょう。

※)資源や自然を使い捨てるような、食べ散らかして次に行くイナゴのような考え方ではないでしょうか?

そこで、技術革新や経済発展を駆動してきた人の欲求・欲望について考えてみます。

ヒトの欲求・欲望の心理学的構造

2017-10-5

・社会学者の見田は、現代の課題を解決する4つの視点の転換をあげています。

・これは、アメリカの心理学者マズローが考えた欲求モデル※)で欠乏欲求を調整するべきということではないでしょうか?

 すなわち存在欲求の充足が重要、と考えられます。

・多くの新商品や新サービスは、本能的欲求(動物性)レベルから近代社会に特有の欲求レベルまでの欠乏欲求を満たすために生み出されています。しかし、欠乏欲求の充足では、心の深いところを満たすことは難しい。

・心の深いところを満たす商品やサービスは、これまでは芸術作品や宗教・ハイレベルの趣味などの非工業品、非産業活動から得るものと考えられてきました。

心の深いところを満たす商品やサービスは、存在欲求を充足するのもではないかと考えます。

・見田が提案した考え方の転換を行うには、存在欲求を充足する新しい商品やサービスが必要と思います。

)有名なマズローの欲求モデルは現在の心理学では古いと考えられています。マズローは下層から上層に段階的に欲求がステップアップすると考えました。

  実際はマズローのモデル程単純ではなく、各レベルの欲求は同時に発生し、かつ相互に関係しています。

  しかしながら、大きな枠組みとしてとらえ、考えを整理するのには有用と思われます。 

新しいモノづくりの視点

2017-10-5

上記を踏まえて、マズローの上位レベルの欲求(存在欲求)を満たす新しい道具の特性を以下のようにまとめることができるでしょう。

 

 ・生きることの楽しみ・驚き・ユーモアを日常の中に見出せる道具。

  従って毎日使う日用品や雑貨である。(衣食住の基本から)

 ・大量生産ではない、作りこんだ工芸品的な道具(高価)。

 ・修理しながら長く使うことで、愛着がわく道具。

 ・便利さだけでなく、敷居が高い・少し不便な要素がある(人が成長する)道具。(道具である限り便利さも重要)

 ・変化が速いデジタル技術はこれにそぐわない。(長く使えない)

 ・お手軽な非日常(グルメ趣味習い事遊戯スポーツ)に安易に流れない。

日常を非日常化する日常道具。

このような道具を何と呼べばいいのでしょうか?

フランスの哲学者バタイユの考えにちなんで、とりあえず至高道具としておきます。

至高道具に近い道具の例

2017-10-9

このような道具は、日常道具でなければ、過去にも現在にもいろいろと見つけることができます。

・茶道の茶碗、茶器

お茶を楽しむことを極限まで追求した利休の哲学を体現した究極の道具です。

特に初代長次郎の黒楽茶碗が素晴らしすぎます。

敷居が高いが、自然や人生の深い豊かさが味わえます。

残念ながら現代では非日常性が高すぎて、一部の人しかアクセスできません。

・楽器

習得するのに時間がかかりますが、自在に音楽を演奏することは単に聴くだけでは味わえない喜びです

ただし、非日常で使う道具です。

 

その他にも、趣味の道具は大抵至高性が高いです。

高級釣り具:アユ釣り、ヘラブナ釣り用など。高級スポーツ道具:ゴルフクラブ、高級自転車。高級オーディオ。etc.

・伝統工芸道具

例えば、

高級和包丁:研ぎ直しなど手入れが手間ですが、長く使えます。驚くほどよく切れるので料理が楽しくなります。プロは日常で使います。

高級漆器:食洗機で洗えないデリケートさで不便なところがあります。しかし、プラスチックにはない暖かさ、軽さ、気品があります。漆の塗り直しなど修理して何十年と使うことができます。子供のころから高級食器を使うと、いろいろ教育上の効果があるそうです。 

・安藤忠雄の建築

有名な住吉の長屋(1976年)では、奥に細長い長屋スペースの中央1/3部に中庭があり、住人は奥の部屋へ行くのに雨の日などわざわざ傘をさして移動しなければなりません。しかし、そうすることではじめて自然を直接感じる感性を日常の中に取り戻すことができるのです。住みやすさとは全く異なる価値を受け入れ住みこなす、高い意識が住む人に求められます。 

BeaTOOLが目指すモノづくり

2017-10-5

・今後、日本が(世界も)拡大しない人口、成長しない経済状況を迎える予測の中、大量生産・大量消費を”補正”し、製造業が生き残る ためのモノづくりの新しい考え方を提案します。(効率や便利さを全く敵視したり、単純に昔に戻すように考えることは良くないです)

・大量消費社会から少量生産へ移行するためには、 以下のモノづくりの視点の転換が必要 ではないでしょうか?

   ①長く使える愛着道具(至高道具)を作ること

   ②日常生活でも驚きユーモア発見を楽しめる

   ③少し敷居が高いがその道具を使うと成長する

・地方の中小企業、個人事業主がその地方独自の文化的着眼点で至高道具を開発し、 製造・販売することで下請けから自立できるのではないでしょうか?

そのような道具が実際はどのようなものか?具体化するのは大変難しいでしょう。

しかし、BeaTOOLは実際に作ってみて世に問いたいと思います。

参考文献

2017-10-7

1)川口盛之助 「メガトレンド 2016-2025」  2016 日経BP

2)見田宗介  「社会学入門」  2006年 岩波新書

3)真木悠介  「時間の比較社会学」  1981年 岩波現代文庫

)広井良典  定常型社会」   2001年 岩波新書 

5)北原隆、乗越皓司  「道具の起源」  1986年 東海大学出版

6)福岡賢正  「たのしい不便」 2000年 南方新社

川上浩司  「不便から生まれるデザイン」  2011年 化学同人

8)G. バタイユ  「至高性 呪われた部分」 1990年 人文書院

9)D.A. ノーマン  「人を賢くする道具」  1996年 新曜社

10D.A. ノーマン  「エモーショナル・デザイン」  2004年 新曜社

11T. ブラウン  デザイン思考が世界を変える」 2014年 早川書房

12)佐々木正人  知性はどこに生まれるか ダーウインとアフォーダンス」 1996年 講談社 

13)川口盛之助  「オタクで女の子な国のモノづくり」  2007年 講談社

14)川上浩司  「ごめんなさい、もしあなたがちょっとでも行き詰まりを感じているなら、不便を取り入れてみてはどうですか?~不便益という発想」  2017年 インプレス


最新製品デザイン理論を大学研究室に学ぶ。                                       2017-10-7

京都工芸繊維大学 デザイン経営工学 木谷庸二 准教授(製品デザイン計画)

・京都大学 デザイン学ユニット 川上浩司 教授(不便益学)


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